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プログレッシヴ・アンダーグラウンド・メタルのめくるめく世界【ゴシック〜ドゥーム〜アヴァンギャルド寄り篇】(解説部分更新中)


参考資料はこちら:
(英語インタビューなどは抄訳付き)


【ゴシック〜ドゥーム〜アヴァンギャルド寄り】

Thomas Gabriel (Warrior/Fischer)関連(HELLHAMMERCELTIC FROSTAPOLLYON SUNTRIPTYKON
CATHEDRAL
CONFESSOR
UNHOLY
THE 3RD & THE MORTAL
MISANTHROPE
MAUDLIN OF THE WELL
ATROX
RAM-ZET
UNEXPECT
AARNI〜UMBRA NIHIL
DIABLO SWING ORCHESTRA
ORPHANED LAND

(解説を書いたものについては名前を太字にしています。)



Thomas Gabriel (Warrior/Fischer)関連(スイス)
HELLHAMMERCELTIC FROSTAPOLLYON SUNTRIPTYKON

Into the Pandemonium

Into the Pandemonium


(HELLHAMMERの2ndデモ『Triumph of Death』フル音源)'83

CELTIC FROST『Morbid Tails』フル音源:EP『Morbid Tails』とEP『Emperor's Return』を合わせて曲順を変えたもの)'84〜'85

CELTIC FROSTの1st『To Mega Therion』フル音源)'85

CELTIC FROSTの2nd『Into The Pandemonium』フル音源)'87

(APOLLYON SUN『Sub』から「Naked Underground」)'00

CELTIC FROSTの5th『Monotheist』フル音源)'06

(TRIPTYKONの2nd『Melana Chasmata』フル音源)'14

80年代のメタル〜ハードコアシーンを代表する天才。作編曲と演奏(ボーカル・ギター)の両面において世界中のミュージシャンに絶大な影響を与えました。デスメタルブラックメタルゴシックメタル〜フューネラルドゥームなどの直接的影響源であり、NIRVANAやMELVINSなどを通してアメリカの(ハードコア寄り)アンダーグラウンドシーンにも影響を与えています。雑多な音楽要素を単線のフレーズに落とし込んで聴かせてしまう音遣い感覚は唯一無二で、これを上回る旨みを獲得できたものは殆ど存在しません。そういう意味ではBLACK SABBATHやDISCHARGEにも劣らない、素晴らしい“オリジネイター”なのです。

Tom G.の作る曲は、基本的にはシンプルなフレーズの積み重ねから成り立っています。コード付けを避けた単音フレーズを並べて一曲を通してしまう構成で、その断片は一見どこにでもありそうなものばかり。しかし、多くの「リフ(反復フレーズ)志向」のメタル〜ハードコアが転調(キーチェンジ)などを交えずに“同じポジション”で弾き続けるのに対し、Tom G.の曲では頻繁に転調(というかtonal interchange)がなされます。
たとえば〈Ⅰ→Ⅰ#→Ⅰ〉進行だけで押していくところでも、キーを「C→E→D」と変化させながらそうした進行を繰り返すことにより、
「〈C→C#→C〉→〈E→F→E〉→〈D→D#→D〉」
というふうに、“半音を多用して複雑に揺れ動く”浮遊感ある音遣いをすることができます。
(上の例で言えば、Cを移動ドの根音(ド)としてみれば、ドからファまでの間の全ての音〈ド・ド#・レ・レ#・ミ・ファ〉が用いられ、12音技法に近い複調感覚が生まれています。
(通常のスケールでは、ひとつの調においては〈〉内6音のうちせいぜい4音くらいしか使わない。))
また、一方で“キーの音(C・E・D)を足場にしつつ周りを蠢く”進行が組み込まれているため、そこにはある種の安定感が生まれます。
こうした“彫りの深い”“浮遊感と安定感を両立する”音遣いは、多くの“同じポジションで弾き続ける”音楽とは一線を画するもので、フレーズの断片(ミクロ)だけみれば単調ですが、全体(マクロ)としてみれば複雑な広がりを生み出しているのです。この人の曲についてよく言われる「単純なリフを重ねてるのに何故か個性的」という評価は、こうした音遣いのミクロの部分だけをみて(しかしマクロの感覚は体で理解した上で)なされているものなのだと言えます。

また、こうした“転調”だけでなく、その断片となるフレーズの構成も実は非常に個性的です。
多くのリフ・ミュージックがⅣ・Ⅳ#・Ⅰ#(マイナースケールの移動ドでみれば、Ⅰ=ラに対し、それぞれレ・レ#・ラ#)といった“引っ掛かりの強い”キメの音程しか重視しないのに対し、Tom G.の音遣いにおいてはⅡやⅦ♭(それぞれⅠからみて一音上・一音下)などの“引っ掛かりがそこまで強くない”音程も巧みに用いられます。流れや場面に応じて“引っ掛かり”の強さを使い分ける力加減が絶妙で、断片だけみても深い陰翳を描き出しているのです。
こうした独特の音進行は「ロックンロールのブルースマイナーペンタトニック(ラドレミソ)に複雑な半音遣いを加えた」感じのもので、クラシカルなマイナースケールやブルーノートなどとは異なる、生硬く潤った湿り気を持っています。これが“はっきりしたコード付け”による色付け(=ニュアンスを限定してしまう処理)を避けた“未加工”な形で提示されることにより、無限の“想像の余地”を伴う豊かな暗黒浮遊感が生まれるのです。

Tom G.の音遣いは以上のような“複雑なモノトーン”感に満ちたもので、コード付けして様々な形に加工してしまうことができる“素材としての優秀さ”もあわせ、後続のミュージシャンに絶大な影響を与えています。それぞれの理解度は異なるものの、こうした「モノトーンの暗黒浮遊感」は多くのバンドに受け継がれていますし、MORBID ANGELやSEPULTURA、NIRVANAにMELVINSなど、独自のやり方で素晴らしく個性的なものに変化させてしまった例もあります。そうした新たな“オリジネイター”をはさんだ間接的伝播も考えれば、その影響の広さ深さは想像もつきません。80年代以降の地下音楽シーンにおいては、ジャンルを問わず最も大きな影響力を持ったミュージシャンの一人なのです。

こうした音遣い〜作編曲だけでも凄いのですが、Tom G.とそのバンドは、演奏の味わいにおいても唯一無二の魅力を誇っています。
Tomはボーカリスト・ギタリストなのですが、その個性的で豊かな音色は他に比すべきものがありません。「ニューウェーブ寄りの退廃的な歌い回しとVENOM以降の逞しいガナリ声とを強靭な発声で融合させた」ようなボーカルは、深い湿り気と飄々とした品の良さを両立していて、独特の掛け声もあってとてもよく真似されるものなのですが、同等以上の存在感を獲得したフォロワーは存在しません。また、ギターの音色も、「ハードコアの“水気を吸ってぶよぶよ膨れる”響きをメタル的な締まりをもって固定した」感じの実に個性的なもので、どこか“超合金”をイメージさせる独特の鳴りは、一音聴けばそれとわかるものになっています。こうした音色を優れたリズム処理能力のもとで使いこなす演奏の魅力は圧倒的で、こうした演奏スタイルがそのまま音楽全体の個性になっています。
これに加えて、Tomのバンドでは「硬く滑らかな」「スピードと引っ掛かりを両立した」ドラマーが起用されることが殆どで、その質感がTomの演奏と絶妙に組み合わさることにより、他では聴けない素晴らしい味わいが生まれます。CELTIC FROSTの1st以降はそういうタイプのテクニシャンが起用され続けていて、独特の作編曲を見事に引き立ててくれているのです。

Tom G.は、以上のような唯一無二の持ち味を磨きながら、キャリアの全期において個性的な傑作を生み続けてきました。

最初期に結成したHELLHAMMER('82〜'84)は地下音楽史上になだたる名バンドで、VENOMやDISCHARGEのスタイルに大きな影響を受けつつ、上記のような個性を萌芽させています。上に挙げた2ndデモ『Triumph of Death』('83)は公式に発表した音源としては初めてのもので(1stデモ『Death Fiend』は発表せずに破棄)、VENOMを数倍極悪にしたような圧倒的な勢いが捉えられています。(こうした作品により「スイスで最も酷いバンド」という評価を公式に得たという話ですが、それも確かに頷けます。)後のクールな印象と比べると、本作の初期衝動の塊のような“なりふり構わない”感じは異質とも言えますが、それだけに特定の層には強力にアピールしており、プリミティブなスラッシュメタルデスメタルを好む層からはいまだに崇拝される対象であり続けています。

3枚のデモと1枚のEPを製作したのち、HELLHAMMERはCELTIC FROST('84〜'93)へ名義を変更。先に述べたような個性を確立し、後世に影響を与え続ける歴史的名盤を連発することになります。この時期から、先に挙げたVENOMやDISCHARGE、ハードロック〜ヘヴィメタルの名バンド(BLACK SABBATHJUDAS PRIEST:ともにオーソドックスでない変遷をしてきたバンドです)に加え、BAUHAUSやSIOUXSIE & THE BANSHEES、CHRISTIAN DEATHといったゴシカルなニューウェーブ寄りバンドからの影響が発揮されてきており、2nd『Into The Pandemonium』('87)ではそうした要素が一気に開花しています。
(このアルバムはPARADISE LOSTなどのゴシックメタルやUNHOLYなどのプレ・フューネラル・ドゥームメタルのバンドに絶大な影響を与えています。)
LAメタルにセルアウトした」と酷評される3rd『Cold Lake』('88)も含めた全てのアルバムが傑作で(この3rdが再発されないのは、「客演したギタリストが他バンドの作品からアイデアを盗用した」のをTomが恥じているからとのことです)、商業的には苦しんだものの、全期に渡って素晴らしい音楽的成果を残しています。

CELTIC FROSTが'93年に解散した後、Tomは同郷の名アーティストH.R.Giger(映画『エイリアン』『Dune』などのアートワークで有名:CELTIC FROSTにも作品を提供)のアシスタントなどをメインに生活していたようです。
そうした活動と並行し、TomはMarquis Marky(CORONERのドラマーで後期のニューウェーブ寄り路線を先導)などとAPOLLYON SUN('95〜'07)を結成しました。このバンドは殆ど語られる機会がないのですが、ゴシカルなインダストリアルメタル路線で素晴らしい作品を残しています。唯一のフルアルバム『Sub』('00年発表)はそうした音楽性が見事に機能した一枚で、MINISTRYやFEAR FACTORY、CORONERの『Grin』、OBLIVEONの『Carnivore Mothermouth』などがいける方はぜひ聴いてみてほしい傑作です。Marquisの粘りあるドラムスが絶妙な引っ掛かりを生み出しており、遅いパートの居心地の良さは絶品です。
また、'01年にはCELTIC FROSTを再結成。かつての同僚Martin E Ain.との共同作業から、これまでの音楽活動の集大成といえる大傑作『Monotheist』('06)を発表し、それに伴い唯一の来日公演を成功させました。しかし、ドラマーとの人間関係の悪化からTomは(自身が創設した)CELTIC FROSTを脱退してしまいます。これによりバンドは解散('07年)。その歴史に終止符が打たれることになりました。

その後、Tomは新たなバンドTRIPTYKON('08〜)を結成。フューネラル・ドゥームに通じるようなコードワークを試しつつ、これまで培ってきた音楽性をさらに深化させています。'14年に発表された2nd『Melana Chasmata』はそうした方向性が素晴らしい結実をみせた大傑作で、1stでは多少湿っぽい方に流れすぎた雰囲気が、特有の優れたバランス感覚のもとで見事に整えられています。アンサンブルのまとまりもTom G.関連バンド史上最高で、個性的な演奏表現力がバンド全体で強力に増幅されています。(1st発表後の来日公演も本当に素晴らしいものでした。)バンド内の人間関係が非常に良いことを窺わせてくれる仕上がりで、今後の活動にも期待が持てます。

以上のような活動を通して圧倒的な天才を発揮し続けるTom G.は文字通りの「生ける伝説」であり、残した作品は全て唯一無二の味わいを持つ傑作ばかりです。テクニックを売りにしない音楽性は本稿で扱うバンドの多くと毛色が異なりますが、その表現力の深さと“格”の凄さは文句無しにトップクラス。(MESHUGGAHやCYNIC、OPETHやIHSAHNなどより上です。)この人の活動に親しむことで音楽史の流れがよく見えるようになりますし、単純に得られる“音楽的歓び”も比類ないものがあります。ぜひ聴いてみることをおすすめします。



PARADISE LOST(イギリス)

Gothic (W/Dvd) (Spec)

Gothic (W/Dvd) (Spec)


(『Gothic』フル音源)'91

(『draconian times』フル音源)'95



CATHEDRAL(イギリス)

Forest of Equilibrium

Forest of Equilibrium


(1st『Forest of Equilibrium』フル音源)'91



CONFESSOR(アメリカ)

Condemned [Analog]

Condemned [Analog]


(1st『Condemned』フル音源)'91

(2nd『Unraveled』フル音源プレイリスト)'05

アンダーグラウンドなメタルシーンが生み出した史上最強のカルト・バンド。本活動時に発表した唯一のフルアルバム『Condemned』('91)は文字通りの“他に類を見ぬ”傑作で、奇怪な音楽性と異常な演奏表現力により、聴くことのできた人々に大きな衝撃を与えました。常識を著しく逸脱した内容が災いしてか、今に至るまで一般的な評価を得ることは殆どできていないのですが、その実力は強力無比。本稿をここまで読んで頂けた方にはぜひ聴いてみてほしいバンドです。

CONFESSORの音楽性を簡潔に言い表すのは困難です。メンバーによれば、影響源はTROUBLE・BLACK SABBATH・NASTY SAVAGE・KING DIAMOND・DESTRUCTIONあたりらしいのですが、確かに頷ける部分もあるものの、そうしたバンドをそのまま成長させたらこうなるとはとても言えない仕上がりです。
CELTIC FROSTに英国ブルースロックの旨みをたっぷり含ませたようなリフを土台に、独創的すぎるフレーズを連発するドラムスが絡み、その上を漂う高音ボーカルが異常な不協和音を描き続ける。感覚的に例えるならば「MESHUGGAHをアメリカン・ゴシック・メタル化したもの」という感じもあり(リズム構成などは全然異なります)、その音遣いは得体の知れない滋味に満ちています。作編曲も演奏表現も最高レベルの個性を備えているため、理解するためにはこのバンドそのものをひたすら聴き込むしかないのですが、それにより得られる手応えに比肩するものはありません。“BLACK SABBATHに連なるヘヴィ・ロック・シーンが生み出した究極の珍味”とすら言える音楽なのです。

CONFESSORの音楽は、基本的にはギター&ベースのリフを土台に構成されているようです。
ベースのCary Rowellsがインタビュー('05年:http://metalchaos.co.uk/Confessor%20Interview.htm)で答えたところによると、作編曲の流れは
・誰か(主にギター2人のうちどちらか)が持ってきた1つか2つのリフに全員で取り組み、それを変化させたり他のリフを繋げたりして、全体の構造を作っていく
・それを繰り返し演奏して概形を作ったら、そこにドラムス・ベース・リードギターを加えていく
・それにより大体の構造が出来上がったら、ボーカリストScottのアイデアも積極的に取り入れて、歌メロを付けていく
というふうになっているとのことです。
つまり、ギター&ベースのリフで音遣い・リズム構成の概形を作ってしまった上でそれを装飾していくのです。従って、全体のコード感や拍子の構成はギター&ベースのリフにほぼそのまま対応しますから、リフさえ聴いていれば全体の流れをつかむことができます。このバンドの音楽においてはどうしてもSteve Sheltonの「脳みそが4分割ぐらいされていて両手両足を好き勝手に動かせるんだろうな」(©Thrash or Die!)という複雑なドラムス・フレーズが目立ちますが、それはあくまでリフを装飾するもので、全体の構造においては“オマケ”に過ぎないわけです。例えば、1stのタイトルトラック「Condemned」で“5拍子リフとバスドラで同期しつつ3拍ループのシンバルを絡める”ような場面では、ドラムスだけ聴いているとわけがわからなくなりますが、(入り・切りのはっきりした)リフに注目しつづければ、展開を見失わずに聴き通すことができます。実のところ、リズム構造はかなり“割り切り”やすく、奇数拍子と4拍子系の交錯する構成にも“聴き手を振り回す”無理矢理さはありません。ひとたび慣れてしまえば、滑らかでゆったりした展開に落ち着いて聴き浸ることができてしまうのです。そして、このようにして聴き込んでいけば、奇怪な印象に満ちた楽曲も、よく整理された“かたちの良い”仕上がりになっていることがわかります。独自の方向性を突っ走りながらも、明晰な語り口を持つ洗練された仕上がりになっているのです。

こうした音楽性に加え、このバンドはメンバー全員が異次元レベルの名人です。
先に述べたドラムスのSteve Sheltonなどは「John BonhamLED ZEPPELIN)〜Neil Peart(RUSH)ラインの究極進化系」といえる達人で、凄まじい重みをもって“芯”を打ち抜くタッチと完璧なリズム処理だけみても最高級のプレイヤーなのに、フレーズのセンスと引き出しの多さに関しても他の追随を許しません。(あらゆるジャンルをみてもトップクラスの打楽器奏者だと思います。)
また、ボーカルのScott Jeffreysも信じ難い実力者です。スピードメタル〜パワーメタル系統のいわゆる“ハイトーン”スタイルなのですが、低域から高域まで完璧に充実した力みのない発声も、異様な不協和音の中でブレずに目的の音程をヒットする音感も素晴らしく、一見淡白なようでいて巧みなフレージングもあって、音楽全体の雰囲気に完璧に溶け込んでいます。
この2人に比べると地味なギター・ベースも超絶的な腕前の持ち主で、リズムカッティングもリードで出てくるところも“丁寧な勢い”に溢れています。他にありそうでない個性的な音色も、音楽全体の個性に大きく貢献していると思われます。
そして、以上のようなメンバーが演奏技術を“ひけらかす”ことなく息を合わせるアンサンブルが何より素晴らしく、その豊かで幅のある表現力が、スタジオ録音においても見事に捉えられているのです。
1st『Condemned』('91年発表)は、'88・'89・'90年に制作された3つのデモ(計9曲)の中から8曲が採用され、それに新曲1曲を加えた形で構成されています。何年もかけてやり込んだ上でのテイクは(「スタジオ録音で発表した新曲をライヴで作り込んでいく」というのとは異なる)熟成された“完成品”であり、このバンドの実力が申し分なく発揮されたものと言えます。本当にあらゆる面で充実した大傑作なのです。

ただ、このような大傑作も、発表当時は正当な評価を得ることができませんでした。当時のアンダーグラウンドシーンはデスメタル全盛で、ボーカルも含めスピードと低音を極める音楽が好まれていました。そういうところにこのような“ハイトーン&スローテンポ”の複雑な音楽を発表しても、「なんだか異様なものを聴いた」という以上の反応を得ることは難しく、充分な人気を集めることはできなかったようです。(1stの売り上げは当時で35000枚ということなので、こういうジャンルのものとしてはそこまで悪くなかったのではないかとも思いますが。)
ライヴに関しても、North Carolina(輩出した有名バンドはCORROSION OF COMFORMITYのみ)の小さなシーンを本拠地にしていたこともあってか、うまく活動範囲を広げることができなかったようです。所属レーベルEaracheが主催した欧州ツアー「Gods of Grind」(CARCASS・CATHEDRAL・ENTOMBEDとのパッケージ・ツアー)は成功したものの、NOCTURNUSなどと回った北米ツアーでは十分なサポートを得られなかったという話で、ライヴを通してプロモーションをしていくという面においても、満足のいく活動ができなかったのでした。
結局CONFESSORは2ndアルバムの制作途中に空中分解('94年)。ひとたび活動を停止することになったのでした。

その後、ベースのCaryとドラムスのSteveはFLY MACHINEやLOINCLOTHを結成し、常に演奏を続けていたようです。ギターのBrian Shoafも一時期FLY MACHINEに参加していましたが、ほどなくして脱退、数年間演奏をしていなかったとのこと。また、ボーカルのScottはDRENCHというバンドに少しの間在籍したのち脱退、学業に専念していたという話です。

こうして凍結されていたCONFESSORですが、'02年になって話が動き始めます。1stから参加したギターのIvan Colonが心臓関係の合併症で逝去。7ヶ月の闘病を経てIvanの奥様に残った医療費の負債を援助するため、共通の友人がCaryに「CONFESSORを復活させてベネフィット・ショウをしないか」と進言し、Ivanの前任者だったGraham Fryも含めた全メンバーがこれを快諾。再結成ライヴが実現することになったのでした。(負債を返してお釣りがくるほどの収益が得られたようです。)このライヴで手応えを得たことによりメンバーの意欲に火がついたようで、CaryとSteveは(再結成ライヴの半年後に)FLY MACHINEを解散し、そこでの同僚Shawn McCoyを引き連れ、5人編成のCONFESSORを復活させたのでした。
こうして活動を再開させたCONFESSORは、'09年にボーカルのScottが仕事の関係で離脱したのち再び凍結状態に陥っているのですが('09年に解散→'11年にScottが復帰したものの仕事の関係で中国に住んでいるため簡単には集まれない)、'05年に2ndアルバム『Unraveled』を完成させ、発表しています。1stの音楽性をより成熟させ歌モノに寄せたような仕上がりはどこかALICE IN CHAINSを渋く抽象的にしたような趣があり(Scottは'05年のインタビューhttp://www.metal-rules.com/metalnews/2005/01/20/confessor-vocalist-scott-jeffreys/で「歌い方に影響を受けた」と言っています)、1stとはまた別の素晴らしい味わいを生んでいます。人によってはこちらの方が気に入るかもしれません。ぜひ聴いてみてほしい大傑作です。

この2ndの発売時に行われたインタビューでは、各メンバーがそれぞれ「過去を振り返るつもりはないから1stの再発はしない」と言っており、このアルバムを長く入手しづらいものにし続けていました。(こうしたこともあって、1stの“カルトな名盤”としての名声が高まり続けていました。)しかし、'15年になって突然再発が実現。現在では入手が可能な状況になっています。これを機に再び活動を本格化するのか否かはわからないのですが、この再発だけみても相当の快挙。再び廃盤にならないうちに手に入れることをおすすめします。持っていて損はない素晴らしい作品です。

CONFESSORの音楽は、そのあまりにも複雑かつ高度な音楽性もあって、衝撃を与える一方で殆どフォロワーを生んできませんでしたが(真似すること自体が困難なため)、メタルシーンの大物達にも確かに影響を与えています。2ndのプラスチックケースに貼られた宣材ラベルには「CONFESSORはLAMB OF GOD誕生のサウンドトラックだった」というChris Adler(LAMB OF GODのドラマー・リーダー)のコメントが載っていますし、その下にはPhilip H. Ancelmo(DOWN・PANTERA)とKarl Sanders(NILE)の「最高級品」「神がかってる」という賛辞が並んでいます。このような(業界屈指の音楽マニアでもある)実力者が口を揃えて絶賛するというだけでも、その音楽性の凄さを感じて頂けるのでないかと思います。
また、そんなことは置いてみても、ALICE IN CHAINSやPSYCHOTIC WALTZ、NEVERMOREやMAUDLIN OF THE WELLなどと並べて語られるべき“アメリカン・ゴシック”メタルの名バンドでもあります。
音楽性と演奏表現の両面において余人の追随を許さない驚異的な実力者。この素晴らしいバンドが正当に評価される日が来ることを、心より願う次第です。



UNHOLYフィンランド

The Second Ring Of Power + DVD (NTSC REGION 0)

The Second Ring Of Power + DVD (NTSC REGION 0)


(1st『From The Shadows』フル音源)'93

(2nd『The Second Ring of Power』フル音源)'94

(3rd『Rapture』プレイリスト:1曲欠け・曲順ばらばら)'98

(4th『Gracefallen』プレイリスト:3曲欠け・曲順ばらばら)'99

'90年結成(前身は'88年結成)。フィンランドの地下シーンを代表する“知る人ぞ知る”名バンドで、一般的には「フューネラル・ドゥーム・メタルの雛形のひとつ」とされることが多いようです。しかし、音楽的にはそうしたジャンルから逸脱する要素が多く、個性的な曲想と強靭な演奏表現力は他に比すべきものがありません。活動中に残した4枚のアルバムはどれも類稀な傑作で、このような音楽スタイルが比較的広く受け入れられるようになった今でこそ聴かれるものばかりです。本稿で扱う全てのものの中でもトップクラスに優れたバンドなので、ここで知られたような方には強くお勧めしておきたいです。

UNHOLYはフィンランドで初めてコープスペイント(いわゆる白塗り骸骨メイク)をしたバンドのひとつで(BEHERITやIMPALED NAZARENEなどと並び)、初期はブラックメタルとして扱われることも多かったようです。曲のテンポ設定はドゥームメタル的に遅いのですが、ギターなどの音作りは“霧のように薄く漂う”軽いもので、伝統的なドゥームメタルの“重く量感のある”スタイルとは一線を画します。これはブラックメタルの多くが持つサウンド面の特徴でもあったため、コープスペイントを施し黒衣を身にまとう演劇的な出で立ちもあわせ、当時のファンジンはUNHOLYを「ブラック・ドゥーム」と形容することが多かったようです。
(前身のHOLY HELL名義で出した1stデモのタイトル『Procession of Black Doom』も、そういった形容をされる一因になっていると思われます。)

UNHOLYのこうした“肉体の重みを感じさせない”音作りは、同郷のTHERGOTHON('90年結成)やSKEPTICISM('91年結成)、そしてオーストラリアのdiSEMBOWELMENT('89年結成)といったバンド達も同時多発的に用いだしたものです。こういう音作り自体は地下シーンの低予算録音にありがちなものだったのですが、ドゥームメタル的な極端に遅いテンポで用いることにより得られる音楽的効果は新鮮で、それを肯定的に受け入れ活用する後続を生んでいきます。そうしたバンドの多くはブルース的な音楽要素を濃く備えておらず、クラシックや古楽寄りの“引っ掛かりの薄い”音進行を特徴としており、それを引き継ぐ後続の音遣い感覚も自然にそういうものになっていくのでした。また、こうしたバンドの音遣い感覚や“肉体の重みを感じさせない”音作りには荘厳で“葬送的な”雰囲気が似合うため、歌詞も含め、哲学的で厭世的な世界観がどんどん強調されていくことになります。このようにして生まれたのがいわゆる「フューネラル・ドゥーム」のバンド群で、ESOTERIC('92年結成)やMOURNFUL CONGREGATION('93年結成)のような強力なバンドの貢献もあって、BLACK SABBATHやPENTAGRAMからELECTRIC WIZARDやSLEEPに連なる(ブルース・ベースの)ドゥームメタルとは異なる音楽的傾向を形作っていくのでした。
ちなみに、こうした“葬送的な”雰囲気はいわゆる「デプレッシヴ・ブラックメタル」に通じるものでもあり、音作りにも共通点があるため、両ジャンルのファン層は重複する傾向があるようです。
そういう意味でも、UNHOLYの「ブラック・ドゥーム」的なスタイルは(BEHERITの名作『Drawing Down The Moon』('93年発表)などと並び)ある種の先駆けと言えるのではないかという気がします。

ただ、その「ブラック・ドゥーム」の先駆けとなったUNHOLYそのものは、活動当時に正当な評価を得ることができなかったようです。速いブラックメタルを求めて来た観客は遅いテンポに失望するばかりだったようですし、アルバムは常に賛否両論でした。2nd『The Second Ring of Power』('94年発表)などは、大手音楽雑誌『Rumba』で酷評されたばかりか、そのレビューを書いた担当者がSpinefarm Records(当時のフィンランドでメタルの流通を担っていた唯一の会社)の従業員で、UNHOLYの作品を取り扱わないように手を回したため、フィンランド国内では輸入盤でなければUNHOLYの作品が手に入らない、というような状況に陥ったことすらあるようです。そうした苦境もあってか、バンドは'94年に一度解散。'96年の復活までしばらく潜伏することになったのでした。

この解散期を挟んで、UNHOLYの活動は音楽的にも二分されます。前半('88〜'94年)は創設者Jarkko Toivonen(ギター)のワンマン期。そして後半('96〜'02年)が、Ismo Toivonen(ギター・キーボード)を中心とした、Jan Kuhanen(ドラムス)ともう一人の創設者Pasi Äijö(ベース・ボーカル)の3人による共同製作期です。

1st『From The Shadows』('93年発表)と2ndの曲は殆どがJarkkoの書いたリフからなるもので、それをバンドで繋ぎ合せて曲としての体裁に整える、というアレンジ方法をとっていたようです。
(1stはJarkkoとPasiの2人でアレンジ、2ndは4人全員でアレンジ。)
対して、3rd『Rapture』('98年発表)と4th『Gracefallen』('99年発表)の復活期にはJarkkoが参加しておらず、他の3人で長時間の即興演奏を通して「その場で曲を構築していく」やり方をとっていたとのことです。
従って、前半と後半ではメインの作曲者が異なるため、音遣いや曲調などの質もかなり異なることになります。

インタビューで表明されている影響源はそれぞれ

Jarkko:
初期CELTIC FROST、VOIVOD、POSSESSED、KREATOR、SLAYER、BLACK SABBATH(最初の4枚)、György Ligetiや“奇妙な”クラシックなど


ということなのですが、前半も後半も、こうした「影響源」から直接連想できるような要素は殆どありません。そうしたものを“ダシ”のレベルまで嚙み砕き、その上でイチから個性を構築したというような、奥深く練度の高い味わいが生まれているのです。UNHOLYの遺した4枚のアルバムではそうした味わいがそれぞれ異なるスタイルで示されていて、その上で「他では聴けない」全体としてのバンドカラーも強固に保持されています。全てが音楽史上に残るべき稀有の傑作で、こうした音楽性が広く受け入れられるようになってきた今でこそ、聴き込み再評価されなければならない金脈と言えるのです。

1st『From The Shadows』('93年発表)は、一言で言えば
CELTIC FROST『To Mega Therion』『Into Pandemonium』の間の路線を、個性派スラッシュメタルや現代音楽寄りクラシックの奇妙な音遣い感覚で強化し、徹底的に遅く演奏した」
感じの音楽性です。CELTIC FROSTの生硬く引っ掛かるリフ進行がクラシック寄りの学理で滑らかに解きほぐされており、スムースな進行感と異様な暗黒浮遊感が両立されています。こうした音遣い感覚は、いわゆる「フューネラル・ドゥーム」の“わりとストレートに泣き濡れる”“意外と色の数が少ない”音遣いとは一線を画すもので、後のそうしたものに通じる要素を含んではいますが、“溶けているもの”の豊かさは比べものにならないくらい上です。キーボードなどをあまり多用しないギターリフ主体のスタイル、そして“闇の奥で何かもぞもぞやっている”ようなアンダーグラウンドな音作りのせいもあって、一聴すると単調に思えてしまいがちな仕上がりでもあるのですが、よく聴き込むと非常に緻密なアレンジがなされており、シンプルに印象的なリフと巧みにひねられた構成に惹き込まれていきます。遅いテンポをじっくりこなしながらも“勢いよく弾け飛ぶ”アタック感を発揮する演奏も強力で、「ゆっくりしているのに獰猛」とでも言うべき只ならぬ迫力に満ちています。全ての点において著しく充実した傑作で、ギターリフ主体のスタイルが生む“モノトーン感”を好む方には最も歓迎されるだろう一枚です。「PARADISE LOSTとVOIVODの中間の音楽性をドゥームメタル化した」ような場面もあり、初期のカルトなゴシックメタルが好きな方にも強くお勧めできるアルバムです。

上記の1stは9曲中8曲がデモで発表済みの曲を再利用したもので、活動開始直後(IsmoとJan加入前)のスタイルを受け継ぐ所の多い作品になっていました。これに対し、翌年発表された2nd『The Second Ring of Power』('94年)は1曲を除く全曲が新たに作られたもので、メインリフは引き続きJarkkoの手によるものの、アレンジの段階で他メンバーのアイデアが大量にインプットされています。このアルバムではIsmoがエレクトリックギターを弾くのをやめ(全てJarkkoが担当)、キーボードの演奏に専念(一部で出てくるバイオリンやアコースティックギターも担当)。それにより、奇怪で個性的なシンフォニック・アレンジが一気に花開くことになりました。音楽要素は前作に繋がるものが多いのですが、テンポ設定は全体的に速めになっており(と言っても最速でいわゆるミドルテンポというくらい)、手際よく印象的なフレーズを連発する構成もあって、初めてUNHOLYの音楽を体験する人にとっては最も「わかりやすい」一枚になっているのではないかと思われます。ただ、他に類を見ないアイデアが炸裂しまくったシンフォニック・アレンジは、容易に納得させてくれない得体の知れない混沌に満ちていて、アルバム全体を通しての聴き味は滑らかとは言えません。優れた構成を通して聴き手に疑問を与え続けるようなアクの強さがあって、バンドの代表作として扱われるわりには例外的な要素を多く含んでいます。堂々とした振舞いで圧迫感を与えるような演奏感覚も強めに出ていて、この点では確かにVOIVODに通じるところもあるのではないかと思います。(音遣いなどは全く異なるのですが。)diSEMBOWELMENTや後のフューネラル・ドゥームに直接つながる「Lady Babylon」の次に気怠くパワフルな「Neverending Day」を持ってくるなど、緩急のつけ方も一筋縄でいかない所が多く、咀嚼にコツは要りますが、慣れると替えのきかない珍味になる一枚と言えます。いきなり聴くのは注意が要るアルバムですが、90年代のアンダーグラウンドシーンを代表すべき大傑作です。

このような前半2枚に対し、ワンマン体制から脱した後半の2枚は語られる機会がさらに少なく、アンダーグラウンドシーンにおいても殆ど黙殺されているように思われます。しかし、得体の知れない深みと著しく滑らかな進行感を両立する作編曲と、遅いテンポを完璧にタメながらほどよい荒々しさを生み出してしまうアンサンブルは、ともに超一流といえる驚異的なもので、少し傾向が異なるものの、前半の2枚にも勝るとも劣らない傑作揃いです。アンダーグラウンドなメタルの雑な勢いを好まない方にはむしろこちらの方がお勧めできるので、こうしたジャンルが苦手な方にもぜひ聴いて頂きたいと思います。

3rd『Rapture』('98年発表)はJarkko以外の3人による共作体制が確立された初のアルバムで、活動休止期間('94〜96年)に各自が書いた曲をバンドで仕上げたものも含まれているようです。長いリハーサルを重ね、ジャムセッションにおける即興を通してアイデアを蓄積、その上でアレンジを仕上げていくという作編曲方式は、一見すると「なんだか単純で捻りのないものができそう」なのですが、出来上がった曲はいずれもクラシック音楽交響曲にも匹敵するような驚異的に緻密な構築美を誇っています。その代表例が4曲目を飾る15分余の大曲「Wunderwerck」で、「長さを気にせず作ったらこうなった」という構成は無理なく堂に入ったペース感覚を持っており、「なんとなく聴いていたらいつの間にか終わっている」ような、非常に聴きやすい仕上がりになっています。このアルバムは全曲がそういう優れた“語り口”を持っていて、一枚を通しての流れまとまりも完璧です。UNHOLYの作品中最も完成度の高い一枚と言えますし、長尺のアルバムが多い「フューネラル・ドゥーム」「ドゥームメタル」のジャンルにおいてもトップクラスの傑作なのではないかと思います。前半の2枚と比べると非・現代音楽寄りのクラシカルな音進行が主で、それが(メタルというより)70年代のハードロックに通じるフレーズ感覚で薫り高く装飾された音遣いは、フィンランドの音楽によくある“歌謡曲的な引っ掛かり”溢れる臭みが薄く、そうしたものが苦手な方にも気軽に味わえるものになっています。(そしてそれでいて、フィンランド以外の音楽では味わえない薫りを豊かに備えています。)UNHOLY入門に最も相応しい傑作と言えるので、長い曲がいける方はぜひここから聴いてみてほしいと思います。

続く4th『Gracefallen』は、前作で確立した「ジャムセッションを通しての緻密な作編曲」を通して様々なスタイルを開拓した作品で、一般的な「フューネラル・ドゥーム」のフォームに比較的近かった前作とは異なる、挑戦的で興味深い捻りをもつアイデアがたくさん試されています。遅いテンポの中で複合拍子(7+6など)やポリリズミックなリズム構成(3拍×4のキーボードに対し4拍×3で一巡する遅いリフを重ねるなど)を試みるアレンジは、いわゆる「ドゥームメタル」の枠内に留まらないものなのですが、それが(前作以上に優れた)最高のドゥーム・グルーヴによって形にされることにより、他では全く聴けない生理的快感を生み出します。実際、このアルバムの音作りと演奏はこの手のジャンルの頂点をいくもので、どんな曲を演奏しようと深く酔わせてくれる極上の機能性を獲得しているのです。アルバム一枚としての流れは少しいびつに思えなくもないですが、どんな曲調を試してもUNHOLYとしての統一感あるイメージを損なわない作編曲はさすがで、慣れれば何も気にせず没入しきることができます。「1stと2ndの間の路線を高度な楽理と演奏力で再構築した」ような趣もあり、このバンドならではの“豊かな混沌”はここに至っても損なわれていません。前作と比べるとクセの強い一枚ですが、やはり聴き込む価値の高い傑作と言えます。OPETHファンにお勧めできるような曲もありますし、機会があればぜひ聴いてみてほしいです。

このアルバムを発表した後、UNHOLYは長く付き合ったAvantgrade Musicを離れ(商業性に欠けるわりに製作費用のかかる音楽性を持て余したレーベル側と意見が合わなくなった模様)、メジャーレーベルとの契約を進めようとしたのですが、交渉を始めたアメリカのレーベル(Relapseらしい)との話がいつまで経ってもまとまらず、自信作だった『Gracefallen』の売上が過去最低だったことや、ブッキングマネージャーなどの問題によりライヴの機会が得られなかったことなどもあって、次第に疲弊し、遂には活動を諦めてしまうことになります。こうしてUNHOLYは'02年に解散。メンバーは音楽から離れ、“普通の”生活をしていくことになったのでした。

ただ、何かのきっかけでUNHOLYの音楽に辿りつき魅了される人も増え続けていたようで、そういう人達からの再発・再結成の願いは解散後もバンド側に届いていたようです。そうした声に応える形で、'11年には初期のデモ全てがRusty Crowbar Recordsから再発。また、Avantgrade Musicから版権を買った名レーベルPeacevilleが全フルアルバムを再発し、UNHOLYの音楽がささやかながら再評価される機会が生まれます。(この再発盤は現在も容易に買えます。)それに応じてか、バンドはリハーサルを重ね、Jarkkoも含む4人の“オリジナル”編成での再結成を果たします。2012年の夏に単独公演を数回、フェスティバルへの出演なども成し遂げて、Jarkko脱退後の曲を含むセットリスト(15分に及ぶ「Wunderwerck」などもやった模様)で素晴らしいパフォーマンスを披露したUNHOLYは、新しい曲を発表することなどはせず、再び解散を選択。こうしてバンドの歴史に幕が下ろされることになったのでした。

以上のように、UNHOLYの音楽は、いわゆる「フューネラル・ドゥーム」に通じる要素を多分に持ちながらも、何か一つのジャンルに回収しきれない混沌とした豊かさを備えたもので、それを形にする驚異的な作編曲・演奏表現力もあわせ、他に類を見ない凄いものであり続けていました。活動していた当時は残念ながら正当な評価を得ることができませんでしたが、その作品は今でも容易に手に入れることができ、現在のシーンと比べてもなお先を行くものとして興味深く聴き込むことができます。カルトで“食いづらい”ところがあるのは否定できませんが、慣れて波長が合えばいつまでも聴き続けられる最高の珍味になり得ます。
機会があればぜひ聴いてみてほしい、超一流のバンドです。

なお、UNHOLY関連の資料として、この記事の参考資料集http://closedeyevisuals.hatenablog.com/entry/2015/11/02/201247にメンバーのインタビューを5本訳して載せています。どれも非常に興味深い内容なので、読み比べてみて頂けると幸いです。



THE 3RD & THE MORTAL(ノルウェー

In This Room

In This Room


(1st『Tears Lain in Earth』フル音源)'94

Youtube上に(中期以降の)アルバム単位の音源がないので別記事で詳述します。個人的には最も優れたバンドの一つだと思います。)



MISANTHROPE(フランス)

1666 Theatre Bizarre

1666 Theatre Bizarre


(3rd『1666…Theatre Bizzare』フル音源)'95



MAUDLIN OF THE WELL(アメリカ)

Leaving Your Body Map

Leaving Your Body Map


(『Bath』フル音源)'01

(『Leaving Your Body Map』フル音源)'01



ATROX(ノルウェー

Orgasm

Orgasm


(4th『Orgasm』フル音源)'03



RAM-ZETノルウェー

Neutralized

Neutralized


(3rd『Intra』フル音源)'05

(4th『Neutralized』フル音源)'09

(5th『Freaks in Wonderland』フル音源)'12

'98年結成。ゴシックメタルのシーンで語られるバンドですが、メンバー当人としてはそちら方面に属している意識はあまりないようです。音楽性を一言でいえば「“MESHUGGAH+シンフォニック・ブラックメタル”を歌モノゴシックメタルに料理した感じ」。複雑な構造をすっきり聴かせてしまう作編曲能力は驚異的で、ボーカルをはじめとした演奏陣の技術&個性も一流です。広く注目されるべき素晴らしいバンドと言えます。

RAM-ZETは、MESHUGGAHの「4拍子系偶数小節(4or8or16)で一周する複雑なシンコペーション・リフ」スタイルを正しく受け継ぎ、しかも独自のやり方で発展させているという点において、ありそうでなかなかないバンドです。
MESHUGGAHの影響を強く受けたということで注目されがちなdjent(ジェント)のバンド達は、MESHUGGAHの『None』〜2nd『Destroy Erace Improve』あたり(上記のような「4拍子系の長いシンコペーション・リフ」が確立されていない時期)のスタイルを中途半端に受け継ぎ、細かく刻むリズム構成を音程変化の乏しい淡白なフレーズにしか仕上げられていないものが多いです。一方RAM-ZETは、MESHUGGAHが3rd『Chaosphere』以降で確立した上記のようなスタイルを正しく活用し、細かく刻むリズム構成に丁寧な音程変化を絡めることにより、複雑に切れ込むアクセント移動とメロディックなフレーズの“形の良さ”を両立することができています。しかも、その音遣い感覚はMESHUGGAHとは毛色の異なる“ゴシカルなブラックメタル〜インダストリアルメタル”風味のもので、MESHUGGAH(やその安直な影響下に留まるdjentら)とは一線を画す個性的な味わいを確立することができているのです。こうしたギター/ベースリフの部分をとってみても大変高度で興味深い音楽性を持っていると言えます。

RAM-ZETが凄いのは、こうした複雑で印象的なバッキングに強力な歌メロをのせ、渋くシンフォニックなアレンジを施して非常に聴きやすい形に仕上げてしまえている所です。小節線できっちり切れずにズレていくシンコペーション・リフに音程変化をつけ、しかもその上によく動くリードメロディを乗せると、フレーズの絡みが非常に複雑になってコントロールするのが難しくなるのですが(多くのdjent系バンドがリフの音程をあまり変化させないようにしている理由はそのあたりにあると思われます)、RAM-ZETはその絡みを完璧にやってのけ、しかも渋くきらびやかなシンフォニック・アレンジさえ施してしまうのです。このような層の厚い仕掛けを(余計なことを全く考えずに楽しめる)親しみやすい「歌モノ」として呑み込ませてしまう作編曲能力は驚異的で、同じ路線でここまでの完成度に達しているバンドは他に存在しません。(していたらぜひ教えてください。お願いします。)こうした構造を楽しむだけでも聴く価値が高いバンドです。

そしてさらに凄いのが卓越した演奏表現力です。RAM-ZETは男女ツインボーカルのバンドなのですが、そのボーカルを務める2人がともに優れた技術と個性を備えています。特に素晴らしいのがメインを張る女声Sfinxで、派手な超高音などの飛び道具は一切使わないのですが、細かく丁寧な歌い回しと繊細な力加減のコントロールが本当に見事で、柔らかく逞しい声質と(ジャズ系のシンガーに通じる)渋く深みのある表現力を両立しているのです。(個人的にはメタルシーンに属する全女性ボーカリストの中で最もうまい人だと思っています。)また、脇を固める男声Zet(バンドのリーダーでギターも兼任)も強力で、“爬虫類系”の粘りある高音ガナリ声はなかなか比較対象の見当たらない個性を確立しています。この2人が絶妙の役割配分で交互に顔になる“歌モノ”アレンジが本当に見事で、そこに注目しているだけでも快適に聴き通すことができてしまうのです。それらを支えるバッキングも勿論非常に強力で、先述のような複雑なアレンジを、ただテクニカルなだけでない個性的なグルーヴを生みながら滑らかに形にしてくれています。あらゆる面において聴き込みがいのある、本当に優れた音楽性を持ったバンドです。

RAM-ZETはこれまでに5枚のフルアルバムを発表しています。どれも優れた作品なのですが、充実度の点では3rdアルバム以降が傑出しており、まずはこの3枚のうちどれかを聴いてみるのがいいのではないかと思います。

3rd『Intra』('05年発表)は、前作において確立されつつあった先述のような音楽性を完成させた一枚で、複雑なシンコペーション・リフと渋くキャッチーな歌メロとが「ブラックメタルとパワーメタルの中間」という感じの比較的ストレートに激しい曲調の中で美しく表現されています。1曲目などはDECAPITATED『Organic Hallucinosis』に通じる感じもありますし、勢いのあるものが好きな方はまずこれを聴くのがいいでしょう。アルバム全体の構成も完璧で、仄暗く蠱惑的な雰囲気に心地よく浸ることができます。わかりやすさの点でも代表作と言える一枚です。

4th『Neutralized』('09年発表)は他の作品と比べるとバラエティ豊かな一枚で、少し“振り回される”感じもなくはない構成になっているのですが、ひとたび慣れてしまえば非常にうまくまとめ上げられていることがわかります。このバンドの作品は、滑稽味をまといながらも基本的には真面目に沈むきらいがあるのですが、このアルバムでは(そういう感じをベースにしながらも)外連味あるチャーミングな印象が前面に出ているためか、沈みすぎず明るくもなりすぎない絶妙なバランスが生まれており、聴き通しても“もたれる”ことがありません。そういうこともあわせ、最も“長く付き合える作品”になっていると言うこともできそうです。個人的には特に好きなアルバムです。

現時点(2015年8月)の最新作である5th『Freaks in Wonderland』('12年発表)は、その点最も“沈み込む”傾向の強い作品で、聴き続けるには注意が必要な一枚かもしれません。
(導入部などユーモラスな部分もありますが、後半に行くにつれて沈み込む流れが強まります。全体的に暗めな3rdよりも“落ちる”感じは強いです。)
ただ、作編曲や演奏は相変わらず見事で、特有の音楽性を引き継ぎながら新しい味も加える(どこかDevin Townsendなどにも通じる)興味深い仕上がりになっています。前2作に勝るとも劣らない傑作であり、聴く価値は高いです。

以上のように、RAM-ZETはあらゆる点において稀有の実力を誇る素晴らしいバンドなのですが、なぜか充分な評価を得ることができていません。
(一般的なメタルファンからは注目されづらいゴシックメタルのシーンで語られ、しかもそうしたシーンの中では突出して“エクストリームメタルらしい”激しいスタイルを持っている(ゴシックメタルのファンからすれば落ち着いていなさすぎて合わない)ということも関係あるのかもしれません。)
これは非常にもったいないことです。上に挙げたようなバンドやジャンルが好きな方はぜひ聴いてみて頂きたいものです。

参考として、メイン2人の「好きなバンド」を挙げておきます。

Zet(リーダー:ギター・男声)
SAMAEL、MESHUGGAH、KING DIAMOND、QUEENSRYCHESLIPKNOTDREAM THEATERVAN HALEN
メタル以外ではMASSIVE ATTACKPINK FLOYDPeter GabrielBjörkなど多数
(2001年のインタビュー
より)

Sfinx(女声リード)
MESHUGGAH、PANTERA、NINE INCH NAILSSOILWORKSLIPKNOTMADDER MORTEM、FINNTROLL、LED ZEPPELINBLACK SABBATHほか多数
より)



UNEXPECT(カナダ)

Fables of the Sleepless

Fables of the Sleepless


(3rd『Fables of The Sleepless Empire』フル音源プレイリスト)'11




Bathos

Bathos


(1st『Bathos』フル音源)'04
 
UMBRA NIHIL(フィンランド

(1st『Gnoia』フル音源)'05



DIABLO SWING ORCHESTRA(スウェーデン

Sing Along Songs for the

Sing Along Songs for the


(1st『The Butcher's Ballroom』)'06

(2nd『Sing along Songs』フル音源プレイリスト)'09

(3rd『Pandra's Pinata』フル音源)'12



ORPHANED LAND(イスラエル

Mabool (Bonus CD)

Mabool (Bonus CD)


(3rd『Mabool:The Story of The Three Sons of Seven』フル音源)'04