【2016年・年間ベストアルバム】(短評未完成)

【2016年・年間ベストアルバム】(短評未完成)

 

・2016年に発表されたアルバムの個人的ベスト20です。

 


・評価基準はこちらです。

http://closedeyevisuals.hatenablog.com/entry/2014/12/30/012322

個人的に特に「肌に合う」「繰り返し興味深く聴き込める」ものを優先して選んでいます。

 


・これはあくまで自分の考えなのですが、ひとさまに見せるべく公開するベスト記事では、あまり多くの作品を挙げるべきではないと思っています。自分がそういう記事を読む場合、30枚も50枚も(具体的な記述なしで)「順不同」で並べられてもどれに注目すればいいのか迷いますし、たとえ順位付けされていたとしても、そんなに多くの枚数に手を出すのも面倒ですから、せいぜい上位5~10枚くらいにしか目が留まりません。

(この場合でいえば「11~30位はそんなに面白くないんだな」と思ってしまうことさえあり得ます。)

たとえば一年に500枚くらい聴き通した上で「出色の作品30枚でその年を総括する」のならそれでもいいのですが、「自分はこんなに聴いている」という主張をしたいのならともかく、「どうしても聴いてほしい傑作をお知らせする」お薦め目的で書くならば、思い切って絞り込んだ少数精鋭を提示するほうが、読む側に伝わり印象に残りやすくなると思うのです。

以下の20枚は、そういう意図のもとで選ばれた傑作です。選ぶ方によっては「ベスト1」になる可能性も高いものばかりですし、機会があればぜひ聴いてみられることをお勧めいたします。もちろんここに入っていない傑作も多数存在します。他の方のベスト記事とあわせて参考にして頂けると幸いです。

 


・ランキングは暫定です。3週間ほどかけて細かく練りましたが、今後の聴き込み次第で入れ替わる可能性も高いです。

 

 


[年間Best20]

 


第20位:amiinAAvalon

 

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  音楽的に未曾有の爛熟期にある昨今のアイドルシーンが生み出した一つの到達点。シンフォニックロック~アニソンやゲーム音楽を始めとした多彩な音楽要素が、緻密な演奏/音作りのもと、聴きやすく表現力豊かな歌モノに纏められています。掛け値無しの大傑作です。

 


  ロックなどの“自作自演”音楽を至上とする音楽ファンからは蔑まれることが多いですが、少なくとも日本のアイドルシーンは、伝統的にハイクオリティな音楽的実験の場として機能し続けてきました。優れた職業作家による卓越した作詞作曲はもちろん、アレンジの面でも興味深い試みがなされてきたのです。

近田春夫の名著『気分は歌謡曲』で繰り返し語られる郷ひろみ筒美京平曲などはその好例ですし、一時期以降のSMAPの曲がアメリカのジャズ/フュージョンシーンのトッププレイヤーを贅沢に召集して製作されているのもよく知られた話です。

こうした製作姿勢は主に「アイドルの比較的未熟な歌唱力をカバーするために楽曲/バックトラックを高品質に仕上げなければならない」商業上の必要からくるものなわけですが、それとは別に「アイドルそのものの魅力からすれば音楽はオマケだから何やっても許される」という側面もあると思われます。

前面に立つアイドルに強力な魅力があるから、音楽的に多少一般的でないことをやってもファンは金を出してくれる。また、アイドル本人の音楽的頓着がそこまで強く(出せ)ないため、運営の姿勢にもよるが、製作者の(隠し味的に仕込むやり方も含め)主張が活かされやすい…という傾向はあるはずです。

特に80年代以降のポップスシーンでは、そうした音楽的実験が人知れず繰り返されてきました。YMO人脈が大挙して参加した郷ひろみの名盤/奇盤『比呂魅卿の犯罪』

http://reryo.blog98.fc2.com/?no=290

はその代表例。作編曲・演奏の両面において個性と品質を両立したものが多いのです。

そうした傾向が一気に広く認知されるきっかけになったのがももいろクローバー(~ももいろクローバーZ)です。複数ジャンルにわたる多様な音楽要素を1曲の中に詰め込み強力な勢いとともに提示するジェットコースター的な作編曲スタイルは、アイドルシーン外の音楽ファンにも大きな衝撃を与えました。

こうした高度で個性的な楽曲が、一流のロックミュージシャンをも上回る圧倒的なパフォーマンスで示される…というスタイルは、百戦錬磨の音楽ファン・そんなことに興味のない人々(アイドル志望の女の子たち含む)の両方に強力にアピールし、昨今の“何でもあり”な状況を生む下地になっていくのです。

このような傾向は、アイドルポップスの作り手となる職業作家/プレイヤーそしてアイドル運営の人達にも大きな影響を与えました。自分の趣味を全開にしてもそれを受け入れてくれる(むしろ「個性と品質を両立する」ものこそを求める)ファンが増え、音楽的実験をやりやすい環境が整っていきます。

BiSやBABYMETALはハードコア~ヘヴィメタルの要素を“本家”以上に活かしたサウンドと作編曲でコアファンを大量に取り込みましたし、ゆるめるモ!BELLRING少女ハートといったグループも、サイケ~プログレニューウェーブ方面の要素を融合させて素晴らしい作品を連発しました。

また、ここ3~4年をみても、3776、Maison book girl、sora tob sakana、ヤなことそっとミュート、フィロソフィーのダンスといった(他ジャンルの超一流と同等以上に張り合える)素晴らしいグループが数多く存在し、音源・パフォーマンスの両面で著しく素晴らしい成果を示し続けています。

amiinAもそうした素晴らしいグループの一つです。音楽担当の製作グループnanolineは、↓(南波一海のインタビュー集『ヒロインたちのうた』p206より)にある通り、ファンに音楽に詳しい人が多いということを知ってから“本腰を入れる”ことを決め、優れた音源を作り続けてきました。

 

 

 

  本作『Avalon』はamiinA(あみいな)が結成4年目に発表した1stフルです。先掲の記事にもある通り、CorneliusスーパーカーbjörkSIGUR RÓS、ARCADE FIREあたりと比較される要素が多いのですが、そのまとめ方と味わいには優れた個性があります。プロデューサー齊藤州一によれば、nanolineの3人は異なる音楽志向をもつものの、クラムボン菅野よう子を好む点では共通しているようです。

https://ototoy.jp/feature/20170610004

確かに「この2組をシンフォニックなハードロックに寄せた」という感じで大体説明できる気もします。

プログレッシヴロック(UKやミスターシリウスのようなシンフォニックなやつ)、小室哲哉ビーイング、日本のフォーク、アニソン、『Dance Dance Revolution』のようなクラブミュージック寄りのゲーム音楽。そうした要素が独自のバランスでうまく溶かし合わされているのです。

本作では、そうした雑多な音楽要素が固有のブルース感覚に昇華され、安易に解決しない独特の引っ掛かり感覚を生んでいます。

たとえば「lilla」(ベースはBABYMETAL神バンドのBOH)

https://m.youtube.com/watch?v=cTbQfOR8Fyg

では、同一コード反復の上で豊かな表情が描かれていきます。

そうした構成の楽曲をうまく聴かせられるのは、演奏や音作りの素晴らしさによる所も大きいと思われます。全体の質感や空気感はわりと均一なのに、音色や力加減は微細に変化し続ける。その結果、表情の豊かさと統一感が見事に両立されていきます。これはアルバムの流れ纏まりの良さにも言えます。

元気だけど力押しにならない不思議な落ち着きがあり、シリアスな雰囲気を前面に出す場面でも深刻になりすぎない。そうした得難い力加減は2人の歌い回しがあってこそのものでもあります。

ライヴでは相互補完的なダンスが加わりさらに凄くなります。

https://m.youtube.com/watch?v=ow5ywi92nZ0

本作では、こうした音遣いや演奏の魅力が一枚を通して様々な形で描かれていて、繰り返し聴き込むほどにそれに対応する回路が開発されていきます。一聴した時点ではそこまでピンとこなくても、聴き返すほどに良いと思える度合いが増していく。聴きやすさと耐聴性を兼ね備えた、実に優れたアルバムです。

 


  先にも少し述べたように、昨今のアイドルシーンから生み出される音楽~製作物全般は、製作陣はもちろんアイドル自身にとっても「自発的に打ち込む」対象となってきています。優れたアイドルに魅了され、自分の意思でアイドルを志す人材が増える…という流れが生まれ続いてきているのです。

アイドルとは「技術より人間力が勝る」「人間的な深み・プレゼンテーション能力で勝負する」存在だということが広く認知され、そうした要素が客からも本人からも積極的に求められるようになる。その結果、器に魂を入れる役割を担うアイドルの自発性や人間的力量の水準が明らかに増してきています。

そうしたことが未曾有の爛熟をもたらしているのが今のアイドルシーンであり(最盛期を過ぎているか否かはわからない)、その音楽的/表現的な豊かさは、60年代末のロックシーンや70年代末のパンク~ニューウェーブシーン、80年代末の各種地下音楽など、歴史上の様々な金脈にも劣りません。

もちろん良いことばかりではありませんが(山師的な運営がもたらす害なども多い)、素晴らしい作品やライヴが量産される土壌としての豊かさは、今の日本の音楽シーン全体をみても屈指と言えるでしょう。本作『Avalon』はそうしたアイドルシーンが生み出した到達点の一つ。お薦めの大傑作です。

 

 

 

第19位:Solange『A Seat at The Table』

 

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   ブラックロック/ヒップホップ以降の黒人音楽における「非黒人音楽要素を積極的に取り込む」路線のひとつの到達点。複雑な和声とアンビエントな音響を絶妙に活かした作編曲&演奏は勿論アルバム全体の構成も素晴らしい。大傑作です。

 


  「ロック等の白人音楽は黒人音楽のパクリから生まれた」という言説があります。これは確かに事実で、ブルースなどをベースに黒人音楽領域で構築されたロックンロールがなければ以降のロックの広がりはありません。しかし、こうしたパクリは一方通行ではなく、黒人音楽側も多くのものを吸収しています。

「ヒップホップのビートが生まれるにあたっては(ジェイムズ・ブラウンなどを核に据えつつ)KRAFTWERKYMOのような“テクノポップ”の影響も極めて大きかった」という話は有名ですし、その後もロック方面の音源(AC/DCやSLAYERなども)を積極的にサンプリングしています。

そういうサンプリング構成や引用音源(→小節線のまたぎ方が滑らかでない・引用音源の演奏自体が整っていない)から生まれた「基幹ビートの流れは滑らかだが出音は“ヨレ/訛”る」トラックの味は、卓越した技術を持つジャズやソウルミュージックの音楽家達にも大きな影響を与えていきます。

ディアンジェロラファエル・サディーク周辺発の「ネオソウル」やロバート・グラスパー以降の「新世代ジャズ」はそうしたヒップホップの“ヨレ/訛り”感覚を優れた演奏技術により人力でコントロールしようとするもので、ここで得られた成果が以降の黒人音楽をさらに鍛えていくのです。

こうした流れの背景にあるのがヒップホップの「サンプリング音源を見つけるためにあらゆる音楽を無節操に掘る」姿勢です。例えば、FLYING LOTUSSOFT MACHINEやGENTLE GIANTといった70年代英国プログレッシヴロックを好んで聴くことを公言しています。

また、昨年の年間ベストアルバム企画で1位を獲得しまくったフランク・オーシャン(アンビエントR&Bの旗手とされる)は、音源付属のマガジンで↓のような嗜好を示しています。

https://genius.com/a/frank-ocean-lists-his-favorite-songs-in-boys-don-t-cry-magazine

CUREや冨田勲スティーヴ・ライヒなど、影響源は多岐に渡りますね。

また、この記事

http://thesignmagazine.com/sotd/radiohead-mitsutaka-nagira-1/

ではRADIOHEAD(CANやライヒなどをルーツに持つ)からジャズやクラシックへの影響が示されています。ケンドリック・ラマーの一昨年作でも「Pyramid Song」が参照されるなど、少なからず影響はあるようです。

こうした「黒人音楽側も非黒人音楽から積極的に吸収する」動きは、一定の音楽的嗜好に縛られる傾向もあるものの(SOFT MACHINEライヒ~極初期フュージョンの音遣い感覚が好まれる:ジャジーヒップホップやハウスで多く引用されてきた影響か)、豊かな成果と蓄積を生んできました。

昨年はそうした蓄積が(またちょっと異なる所から現れたFKA Twigsやインディーロック方面もおそらく意識しつつ)一気にメジャーシーンに反映されるようになった年だと思います。複雑な和声や特殊な音響を用いた聴きやすく奥深いポップスを作り、それで勝負する…という傾向が強まっています。

その好例が先掲フランク・オーシャン『Blond』やビヨンセ『Lemonade』です。元々アメリカのシーンは「品質と個性で勝負する」傾向があり、チャート上位作は売上と音楽的充実度が両立される場合が多いのですが、昨今オルタナティヴR&Bがその多くを占めるようになってきた感があります。

 


  ソランジュ(ビヨンセ実妹)の本作『A Seat at The Table』もこうした流れを代表する傑作です。

http://bmr.jp/feature/168657

全米1位を取るだけでなく、批評面でもTIMEの年間ベスト2位など各所で高く評価されています。豪華な客演陣を完璧に使いこなした内容は見事の一言です。

本作では、先述のような欧州ジャズ~ライヒ~初期フュージョン路線を完全に独自の形に熟成した味わい深い音遣い感覚、それに通じるポストロック的(↑のラインとルーツは共通)音響、“間”を活かした逞しいビートなどが絶妙に融合されています。

このインタビュー

http://www.thefader.com/2016/09/30/solange-knowles-a-seat-at-the-table-interview

にもあるように、核となる12曲(他9曲は間奏)は最初にできた約30曲から厳選されたもので、そうした作業を通し全体の構成を磨き抜いていったからか、アルバムの流れまとまりは完璧な仕上がりになっています。各曲の表情は異なるが全体としては美しい球を描く…という感じです。

この「一枚全体の流れまとまりが完璧」というのは少なくとも10年ほど前までの黒人音楽のアルバムでは意外と稀だったことで(70年代の歴史的名盤も構成は洗練されきっていない場合が多い)、こうした面においても“白人音楽”の名盤からの影響が少なからずあるのかもしれないという気はします。

こうしたポストロック的オルタナティヴソウル路線ではミシェル・ンデゲオチェロのような偉大な先達が既に大傑作を残していますが、本作の音楽的達成・雰囲気表現・アルバムとしての構成力はそうした作品群に引けを取らない(どころか上回りさえする)ものです。聴きやすさも奥深さも素晴らしいですね。

先掲記事にもあるように、歌詞~楽曲のテーマは複雑な/深刻な社会事情を反映したものも多いのですが、硬く融通のきかない様子を前面に出すことはなく、

https://twitter.com/meshupecialshi1/status/876123379715014656?s=21

のような力加減を保ちながら“柔らかい戦闘性”を親しみやすく示し続けていきます。

こうした姿勢&マナーが全編に行き渡った本作は、アンビエントな音響に浸り心地よく聴き流せるBGMとしても、繰り返し吟味できる優れた珍味/美味としても、稀有の深みと耐聴性をもった大傑作になっています。聴けば聴くほど嫌味なく染み込み、どんどん良いと思えるようになるアルバム。お薦めです。

 


  なお、「アンビエント」というのは「ふわふわ漂う音響」などの音作りやその居心地を指す表現として広く使われるものですが、ここでは「聴き流しモード⇄聴き込みモードの移行を随時スムーズに行える」音楽の環境も指しています。気分次第でどちらのモードにも(無意識的に)移れる音楽というわけです。

個人的には、この“聴き流し~聴き込みモード間の自由移行”こそがサティ「家具の音楽」~イーノ「アンビエント・ミュージック」の一つの真髄なのではないかと思います。「聴き流しても聴き込んでもいい」と思わせ負荷なくそうさせうる環境がその音楽にある、だからこそ聴き手がそうできる…というか。

ソランジュの本作は全編優れた歌モノですが、その上で「聴き流していた状態からふと気が向いて聴き込み始めることができ、またいつの間にか聴き流し始めることもできる」環境を常に備えています。その意味で“真に”優れたアンビエント音楽なのではないか、と個人的には思うわけです。本当に良いです。

 

 

 

第18位:BUCK-TICK『アトム未来派No.9』

 

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第17位:Bon Iver『22, A Million』

 

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第16位:網守将平『SONASILE』

 

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第15位:SWANS『The Glowing Man』

 

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第14位:カーネーション『Multimodal Sentiment』

 

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第13位:David Bowie『★』

 

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第12位:Moe and ghosts × 空間現代『Rap Phenomenon』

 

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第11位:No Lie-Sense『Japan's Period』

 

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第10位:Anderson .Paak『Malibu』

 

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第9位:大森靖子『TOKYO BLACK HOLE』

 

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第8位:MESHUGGAH『The Violent Sleep of Reason』

 

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第7位:坂本慎太郎『できれば愛を』

 

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第6位:KING『We Are KING』

 

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第5位:DISHARMONIC ORCHESTRA『Fear of Angst』

 

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第4位:gibkiy gibkiy gibkiy『不条理種劇』

 

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第3位:Esperanza Spalding『Emily's D+Evolution』

 

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第2位:ももいろクローバーZ白金の夜明け

 

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第1位:岡村靖幸『幸福』

 

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